松本市熟年体育大学(総合体育館コース)
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◆不安や迷い克服のヒント メンタルリリース

◆今を精一杯生きる

 スポーツ選手をメンタル的(精神的)に強化する時、苦労するのはゲーム中のプレイが止まっている比較的余裕のある時だとよく言われます。このような時、プレイヤーは「また転んだらどうしよう」、あるいは「ここでボールが入らなかったら」などと余計な恐れとか不安とか迷いを経験します。まだ決まったわけではないのにです。そしてこの不安、恐れ、迷いがいろいろな事をマイナスに導いていくことがよくあります。

 このことを克服していく最も簡単な方法は、「今を生きること」だと思います。私たちの生きている世界には、どうすることもできない時間の流れというものがあります。具体的にいいますと、過去は変えられません。そして未来はわからないわけです。ですから今を生きるしかないわけです。この時間の法則に逆らって私たちは生きてはいけないのに、つい未来を予想しようとするところに落とし穴が存在するのだと思います。今を生きていれば、結果は後から付いてくるということです。

 1999年の全仏オープンで、グラフ選手がセットカウント2-1でヒンギス選手に逆転勝ちし、優勝しました。流れがヒンギスに傾きかけた時、グラフは「勝つか負けるかは関係ない。一球、一球きちんと打つこと」と自分自身に言い聞かせたそうです。この時、もしもグラフが結果にばかりとらわれて、今の自分を見失っていたら、勝てなかったかもしれません。大勝負の勝敗を決めるポイントというのは、テクニックを超えた心のもち方なのです。


◆感情をあるがままに認める

 私たちはよく「前向き思考が大切だ」ということを聞きます。しかし、この前向き思考だけでは説明がつかない矛盾した研究報告があります。

 カリフォルニア大学で行われた実験では、ある俳優に喜びと悲しみの感情を表現してもらうと、両方とも免疫機能が普通の状態よりも上昇しました。喜ぶことは前向きでも、悲しむことは前向きとは言えません。この結果は、「前向き思考がいい」という考え方とは矛盾してくるわけです。しかし、悲しみや怒りの抑圧が女性の乳ガンの増加に関与しているという報告もあることから、悲しんだり、怒ったりすることは、喜びと同じように身体の機能をプラスにしてくれるものだといえます。

 このことから、前向き思考を超えるものは、感情である心の開放、すなわちメンタルリリースであることが予想されます。原住民の文化に共通してみられる治癒はカタルシスであるといわれています。つまり、感情の浄化、感情の完全発散です。我々の身近なところでは、「阿波踊り」や「裸祭り」などの「祭り」がまさにそのような役目を果たしています。感情を発散させることがいかに大切か。私たちは学問などない原始の頃から、それを知っていたのです。

 具体的に説明すると、「おかしい時には大いに笑え。腹が立った時は大いに怒れ。悲しい時には大いに泣け」ということです。この様な感情に無関心になったり、感情を抑えすぎたりすると病気になるということが数多く報告されています。


◆幸せも絶望もあなたのなかに

 生命科学の専門家である柳沢桂子さんは重病をし、そこで学んだことを「恥ずかしさも憎しみも苦しさも自分の中にあるとわかった時、すごく楽になった」と語っています。希望も幸せも絶望も自分の中にあるということでしょう。また、アメリカのオーニッシュ博士は「何ものもあなたに永続する幸福と平和をもたらすことはできません。あなたはすでにそれを持っています。心を充分に鎮めればそれを経験できます」という言葉によって人生が180度変わったといっています。

 このように、自分自身がその事柄をどのように捉えるかによって、受け取り方に大きな違いが出てくるものです。例えば、ビール瓶の中にビールが半分入っていると想像してみて下さい。瓶の中には、誰が見ても半分ビールが入っているわけです。しかし、ビールの大好きな方は、もう半分しかないと思うでしょう。逆にビールの嫌いな方は、まだ半分もあると思うでしょう。つまり、ビールの量という事実は変わらないのですが、人によっては、考え方、受け取り方が全く違うわけです。そして、この違いを判断するのはあなた次第なのです。
(T)
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