松本市熟年体育大学(総合体育館コース)
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◆お猿さんの実験から タダほど怖いものはない

 大脳生理学の研究分野で、興味深い実験が報告されています。今の私たち人間にとって大変示唆に富んだ実験ですので、ご紹介したいと思います。

 最初、お猿さんに赤い光を出し、前にあるレバーを押さえることができると、正解として、ご褒美にジュースを3滴与えます。黄色い光を出した場合は、レバーを押さえないのが正解ですが、ご褒美は与えません(非対照実験)。この実験を繰り返すと、はじめは赤い光でも黄色い光でもお猿さんはレバーに手をかけてしまいます。しかし、次第に学習し、間違いが少なくなり、脳波も安定してきます。

 次の実験では赤い光を出し、お猿さんが前にあるレバーを押さえ正解すると、前の実験と同様にご褒美を与えます。しかし、黄色い光でお猿さんがレバーを押さえず正解しても、前の実験とは異なり、ご褒美を与えることにします(対照実験)。お猿さんは、はじめは様子が分からず戸惑いますが、次第に実験の内容を理解すると、驚いたことに、赤い光が出ても黄色い光が出ても、レバーをまったく握ろうとしなくなります。つまり、何もしなくても、黄色い光さえ提示されればジュースがもらえることを理解するのです。そうなると、お猿さんは何もしようとしなくなります。

 その後再び、一番最初の非対照実験をお猿さんにやらせるのですが、それでもまったくレバーに手をかけなくなります。今まで学習したことを全て失ってしまうのです。何もしないお猿さんには、当然何も与えられません。

 そこで今度は、お猿さんがどのくらい我慢ができるか、この実験を長時間にわたっておこなったところ、がりがりにやせてしまいました。そして、もう死ぬんではないかと思われた頃、ふらふらになった状態でようやくレバーに手をかけたそうです。

 この猿の実験で見られたことは、おそらく人間にも当てはまるであろうと思われます。何もしないでご褒美をもらえるなんて、こんなにいいことはないんじゃないかと私たちは考えてしまいます。今風の言葉で言えば「オイシイ」ということになります。しかし、ずっとこうした「オイシイ」状態が続き、それに慣れっこになってしまうと、最後には何もできなくなってしまうという恐ろしい結果を、この実験は物語っています。豊かさにどっぷりと浸かって、はじめから何もかも与えられていると、人間はダメになってしまう。現代社会の持つさまざまな問題が、この実験に表れているとは思いませんか。
(T)
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